誰も口にしない矛盾 [医療]
ご高齢ではあるが元気な方。開業の先生からの紹介。家族ぐるみらしい。
3日前からの微熱だが少しずつ回復してきている。
ご本人と相談して明日まで経過を見ましょうと、結論づけた。
その後奥様と息子さんが外来に乱入、本人のいないところで心配だから入院させろという。
心配は共感できるし、自分も心配だから明日来てもらうわけで、入院するかどうかは程度問題なのではある。
ただ、「ご本人は帰りたがっていますよ」と言った時、「本人はそういうかもしれませんが。」とがっかりした調子で返された。
若い頃なら「ご本人の意思を無視するのですか!?」などと食ってかかっていたかもしれないが、今回は受け流して結局今その彼を外来で待っている。(おっ受付た)
日本の医療者も家族も、本人よりも家族の考えを大事にする傾向がある。患者側も同様で、自分が病気になりたくないのは家族に迷惑をかけるから。自分が施設に入りたいのも同様。そして家族は心配だから入院なのか、心配したくないから入院なのかどちらかわからなくなってくる。
もし本人に何かあった時、自分たちは本人には怒られないし、訴えられるのは家族からである。
そんな、なんとも言えない矛盾の絡み合いが医療現場には確かに存在している。でも誰もそれを表立って口にすることはない。