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今日研修医に話したこと [臨床]

今日、研修に話した事は、患者さんにその検査をするときによーく考えろと言うこと。前からずっと言ってることではあるが、とりあえず私の印象はアメリカなどでは5%以下は切り捨てて良いという考え方があるように思う。つまり、その可能性が非常に低いのであればあえて検査しなくても、それは許されるというスタンダードが存在し、それによって医療者側が守られ、また医療経済も守られているという印象である。それに対して日本は逆の発想が多くを占めている。

コロナが良い例で、西洋諸国が人の行動を厳しく制限したり、病気を特別に扱うことの方が社会としては相対的損失であるという結論で、どんどんと規制を緩めてきているが、日本ではレアな事例を取り上げて、これがあるからだめだと声高らかに言う人が多く、世論的にもそちらに向いてしまい、政治もそれに従って動くということになり、いまだコロナは第5類のままである。そういう考え方は確かに良い面があり、細部まで行き届いた医療といえるのかもしれない。ただし、その反面しわ寄せが来ているのも確かだ。日本は検査大国。医者も患者も検査を基準に病気のありなしを決める。だからそれ以外の情報は軽視される。だから検査の結果が不確実であることに目を向けようとしないし、よって検査以外の情報が検査の確率をうごかすことを認めようとしない。医療経済が圧迫される中で、検査をしないと医療費が上乗せできないので、より検査を行う方向に流れる。そしてそのことがより医療費と医療の質を悪化させ、医師をヤブ化させる。

 

この話をするきっかけとなった例は

50代の男性の後頭部痛

ヤブ1)はⅠ週間もまえからの頭痛だし、元気そうだから大丈夫痛み止めで帰す。

ヤブ2)は頭痛なのでCTをとり、読影で問題ないことを確認して帰す。

ヤブ3)身体所見で神経学的所見がないが、はじめての頭痛ということなのでCTで所見がないことを確認して帰す

ヤブ4)後頭部痛と言えば、椎骨動脈解離がもっとも怖い、しかしⅠ週間前であるし今日ではなく次回MRIを予約する。

ヤブ5)頭痛はsudden onsetではなく海外出張の時起こり、帰国後は軽快してきている。夕方に強くなり入浴で軽快する。血圧も高くなく、めまいもない。身体所見も問題ない。後頭部痛は椎骨動脈解離が怖いが病歴身体所見から否定。緊張性頭痛でよいだろう。本人も納得しており対症療法で帰宅とする。

この中で最も病院に貢献しているのはヤブ4)次は2)短い診療時間で他の患者を診ることができるから。5)はもっとも診療に時間がかかりしかも検査もしないので、医療費は1)と同じである。

患者さんがCTを希望していたとして、患者にもっとも有益なのはどれだろうか?

医療がふつうのサービス業と違う点は患者の考える幸せと医療者が考える目標が違う点である。当然患者側は医療の知識もなく、特に検査の特性やそれが人体に及ぼす弊害もあまり考えないだろう。お金をだせば買えるというものではないのだ。

医師は検査をするとき必ずそれによって得られるもの(マネージの変更)とその弊害を天秤にかけるのである。当然重篤な疾患をそうていしているのであれば検査閾値は下がるし、患者の意向に多少なりとも影響を受けることもあるかもしれない。

いずれにしても頭痛→CTなどという1対1対応のようなことは特に若い医師はやってはいけないこと。十分考えているひととその時は同じようなことをしているように(むしろ考えている方がぐずぐずしているように)みえるが、ドンドン医師としての実力は開いていくだろう。


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